金沢大学、東海大学、早稲田大学の研究グループが、斜め静電インクジェット法を用いてペロブスカイト太陽電池用薄膜酸化チタン層を作製しました。
この研究成果は、Scientific Reportsに掲載されています。
この記事は下記論文の紹介記事です。
論文:
Shahiduzzaman, Md, et al. "Oblique Electrostatic Inkjet-Deposited TiO 2 Electron Transport Layers for Efficient Planar Perovskite Solar Cells." Scientific Reports 9.1 (2019): 1-8.
近年、その電力変換効率の高さからペロブスカイト太陽電池は注目を集めています。
酸化チタン(TiO 2)は、低コストでありペロブスカイトと一致するエネルギーバンドアライメントのためペロブスカイト太陽電池に最も頻繁に使用されるn型ETL材料です。
より効率的な電子輸送、電荷抽出、低界面再結合を実現するETLとして、均一でピンホールのない完全な表面被覆となるTiO2コンパクト層(CL)を生成することが非常に重要となります。
さらに、ペロブスカイトからフッ素ドープ酸化スズ(FTO)電極により多くの電子を輸送するために、TiO2 CLの厚さを最適化する必要があります。
厚いTiO2CLは、ペロブスカイトからFTOへの電子輸送距離の増加につながり、電荷輸送を減少させます。一方で、薄いTiO2 CLはFTO基板を効率的に覆うことができません。
今まで、TiO2 CL厚さの最適化は、スピンコーティング(SC)を含むいくつかの堆積技術を用いた研究例として報告されてきました。
このような背景から同研究グループは、真空を必要とせずにフッ素ドープ酸化スズ(FTO)基板上に酸化チタン(TiO 2)緻密層(CL)を堆積するための新しくかつシンプルな手法として、斜め静電インクジェット(OEI)技術を開発しました。
作製されたTiO 2は、平面ペロブスカイト太陽電池(PSC)の電子輸送層(ETL)として使用できることを実証しました。
また、このボトムアップOEI技術では、コーティング時間を操作するだけで、TiO2 CL の表面形態と厚さを制御できることも特徴です。
本研究では、OEIで製造されたTiO2の特性をテストし、同時にスピンコーティングとスプレー熱分解によって生成されたTiO2 CL の結果と比較を行いました。
評価の結果、OEI堆積TiO2CLは、PSCのETLを促進する、満足できる表面被覆率と滑らかな形態を示すことが判明しました。
また、ETLとしてOEI蒸着TiO2 CLを使用したPSCの電力変換効率は13.19%と高い値を示したとのことです。
このような結果から、この研究はシンプルかつ低コストで、簡単にスケールアップできる技術を提供していると思われます。
また、OEIは、非常に効率的な平面PSC用のTiO2 CL ETL を堆積するための新しい候補となり、将来の量産に貢献する可能性があります。
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