東北大学の研究グループが、140℃で低温焼結可能な銅ナノ粒子を開発しました。。
この研究成果は、Scientific Reportsで発表されています。
この記事は下記論文の紹介記事です。
プレスリリース:
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2019/01/press-20190129-01-tagen-web.html
論文:
Yoichi Kamikoriyama,et al."Ambient Aqueous-Phase Synthesis of Copper Nanoparticles and Nanopastes with Low-Temperature Sintering and Ultra-High Bonding Abilities."Scientific Reports,volume 9, Article number: 899 (2019)
金属ナノ粒子液は、プリンテッドエレクトロニクスの分野での活用が期待されている材料です。
ナノ粒子を液体に分散することで、様々な印刷プロセスに活用されています。印刷後に一定温度での焼結を行うことで導通を得るプロセスが一般的です。
現在、プリンテッドエレクトロニクス分野で使用される材料は銀が一般的です。
銀のナノ粒子液は多くのメーカーが提供している一方で、マイグレーションやそもそも銀が高価な点が課題として認識されています。
一方で、導電率が良く安価な銅は活用が期待されている材料でありながら、酸化の課題や焼結するための温度が高温な点や特殊な焼成環境が求められる点等の課題から活用が進んでいませんでした。
この課題に対し、東北大学の研究グループが、新たに低温で焼結可能な銅ナノ粒子を開発しました。
東北大学の蟹江澄志准教授らと三井金属鉱業株式会社の上郡山洋一博士らの共同研究により、低温焼結性を有する銅ナノ粒子を水中、大気下、室温という、極めて低環境負荷の条件において合成するプロセスをあらたに開発したとのことです。
得られた銅ナノ粒子表面には、耐酸化性を持つ有機物が吸着しており、この有機物成分が低温(140 ℃程度)で分解することで、銅ナノ粒子の焼結が開始されることを解明しました。
今回開発した銅ナノ粒子をペースト化することで、180 ℃程度の低温焼成(N2雰囲気下の無加圧焼成)でPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムやPI(ポリイミド)フィルム上に銅粒子間が焼結した良好な厚膜銅配線形成(膜厚:14 μm)が可能です。これにより、プリンテッドエレクトロニクスによるIoTセンサーの回路形成材料などとして銀ペーストやハンダ代替が期待できます。
また、模擬接合構造(銅基板間を銅ペーストで接合する)を用いた金属間接合材料としての評価では、200 ℃程度の低温焼成(N2雰囲気下の無加圧焼成)で高いシェア強度(>30 MPa)を示すことを確認しており、次世代パワーデバイス(SiCやGaN)の接合材料として実用化が期待できます。
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