Shanghai Jiao Tong Universityの研究グループが、高温の被覆表面への液滴衝撃冷却において表面特性が与える影響を調査しました。
この研究成果は、Nuclear Engineering and Technologyに掲載されています。
この記事は下記論文の紹介記事です。
論文:
Wang, Zefeng, et al. "Investigation on effect of surface properties on droplet impact cooling of cladding surfaces." Nuclear Engineering and Technology (2019).
原子炉において冷却材喪失事故(LOCA)など、加圧水型原子炉(PWR)の過渡状態または事故の際に、原子炉の炉心が過熱状態になります。被覆管温度が特定の値を超えると、ジルカロイ(Zr)被覆管の酸化が始まり、大量の水素が生成されることで原子炉建屋での水素爆発につながる可能性があります。そのため、多くの想定される冷却材喪失事故の場合、非常用冷却水が注入され、カバーされていないコアが急冷されます。しかし、燃料被覆の表面温度がある値を超えている場合、瞬間的に沸騰した水蒸気によって液体と対象物表面の間に水蒸気の層ができてしまうライデンフロスト現象が起こります。
どのような基板、温度においてライデンフロスト現象が起こるのかは重要なテーマであり、既に多くの金属表面で調査されています。一方で表面酸化した金属では、表面特性が本来の金属と異なっている可能性が高く、液滴と高温表面の間の熱伝達が変化していると考えられます。
このような背景から同グループは、被覆表面の液滴衝撃冷却に対する表面酸化と熱特性の影響を調査しました。
酸化されたFeCrAl、新鮮なFeCrAl、およびZr-4の高温表面に衝突する液滴の流体力学的現象を高速カメラで撮影し、液滴の衝突挙動とライデンフロスト現象に対する表面酸化と固体熱特性の影響を分析したとのことです。
衝突過程の映像結果に基づいて、5つの衝撃レジーム(堆積、二次霧化による反発、二次霧化による崩壊、反発、崩壊)を確認しました。また、液滴の衝突挙動に対する表面酸化と固体熱特性の影響を分析した結果、酸化物粒子が気泡核生成サイト密度を大幅に増加させるため、核沸騰の熱伝達は酸化表面でより活発になることを確認しました。また、ウェーバー数が30より大きい場合、酸化FeCrAlでは550℃までライデンフロスト現象が観察されなかったため、酸化FeCrAlではライデンフロスト温度が大幅に増加することを確認しました。
ライデンフロスト温度(LPT)は固体の熱特性に強く影響され、FeCrAlのLPTは熱拡散率が大きいためZr-4のLPTよりも大幅に低くなります。熱拡散率が高いため、衝突期間中の液滴の冷却により、表面温度の低下が減少していると考えられます。
今回得られた結果から、液滴の衝突時の表面冷却を考慮したLPTの機構モデルが開発されました。理論モデルの結果、ウェーバー数>60における推測は、現在の実験結果とよく一致していることがわかったとことです。
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