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2液混合溶媒の蒸発過程

更新日:2019年9月9日

Indian Institute of Technology Hyderabadの研究グループが、水とエタノールの混合溶媒を用いた蒸発過程の調査を行いました。

この研究成果は、arXivに掲載されています。


この記事は下記論文の紹介記事です。

論文:

Gurrala, Pradeep, et al. "Evaporation of ethanol-water droplet at different substrate temperatures and compositions." arXiv preprint arXiv:1907.05858 (2019).



インクジェット技術によって生成された液滴は、空間を飛翔した後、基板に着滴します。着滴した液滴の溶媒が徐々に揮発し、溶質濃度が増加することで流動性が低下します。最終的には乾燥することで基板に固着します。このプロセスを連続的に行うことで印刷を実現しています。

様々な技術で利用されている液体の蒸発現象は雨に代表されるように身近なものでありながら、界面物理と相変化による複雑な現象です。

特に、加熱された基板に付着した液滴における蒸発現象は、接触線の力学がかかわるため、更に複雑になります。


このような背景から、加熱された基板上に置かれた2種類の溶媒が混合した液体の蒸発動力学が研究されています。

本研究では、エタノールと水の2成分混合液体を用いて液量5μlの蒸発過程を観察しました。エタノールと水を異なる組成比率、各基板温度における蒸発過程を観察することで理論モデルとの比較を行っています。


この研究の結果、2種類の溶媒が混合した液体の蒸発過程は、室温と高温で大きく異なることを観察しました。

基板温度が室温の場合(25℃)、2段階の蒸発過程を観察しました。まず揮発性の高いエタノールが速く蒸発し、その後水の蒸発過程が続くため、2成分混合液体の蒸発は非線形の蒸発挙動を示しています。

基板温度が高い場合(60℃)の二成分液滴の蒸発過程では、さらに興味深い現象を観察したとのことです。

液滴の乾燥時間は二成分混合物中のエタノール濃度の増加と共に非単調傾向を示すことを見出しました。

また、エタノールと水1:1の混合用液を用いた蒸発過程の観察を各基板温度において実施した結果、基板温度を大きくすると、対数関係で二成分液滴の乾燥時間が短くなることを確認にしました。


さらに、基板温度60℃における異なる組成の蒸発動力学は同様の傾向を示します。また、基板温度60°Cにおける蒸発速度は蒸発過程全体で一定であり、基板温度60°Cにおける二成分液滴の蒸発動力学は他の高沸点の単一溶媒と同等であることを確認しました。

最後に、異なる基板温度での純液滴と二成分液滴の蒸発速度を、開発した理論モデルと比較を行いました。その結果、モデル予測は、液滴寿命の定常的な蒸発段階に対して全く満足できるものであることがわかったとのことです。


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