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音響浮遊させた液滴の化学元素分析

Universidad NacionalAutónomadeMéxicoのグループが、固体試料を分析するために一般的に使用される技術であるレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を浮遊させた液滴に用いることで水滴中の非常に低い濃度の重金属を検出する方法を、Optics Lettersに発表しました。


この記事は下記論文の紹介記事です。

論文:

Contreras, Victor, et al. "Chemical elemental analysis of single acoustic-levitated water droplets by laser-induced breakdown spectroscopy." Optics Letters 43.10 (2018): 2260-2263.

https://www.osapublishing.org/ol/fulltext.cfm?uri=ol-43-10-2260&id=386116


レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)は、原子発光分析法の一種です。パルスレーザーにより試料の表面を加熱することで、原子中の束縛電子を励起し電離状態に至り、プラズマを放出させています。この時のプラズマ放出スペクトルを分光計によって検出することで試料の構成元素を分析しています。

原理的には液体、固体双方の分析が可能な技術ですが、液体サンプル分析には課題があり、一般的には固体に用いられることが多い分析手法でした。液体の分析が難しい理由の一つは、液体から形成されたプラズマが素早く消滅してしまうため、プラズマ放出スペクトルを捕捉し測定するための時間が限られていることです。もう1つの課題は、光を散乱させる液体の、波打ち、はじき、またはエアロゾルの形成が正確な計測を阻害する点です。




これらの課題に対し、同チームは、音響波浮上法を用いて、空中でのLIBS分析を実施しました。浮遊している液滴はわずかに蒸発し、液内に含まれる化学物質を1点に集中します。また、液滴の位置が明確な小さな点であるため、コンパクトでコスト効率の良い低エネルギーレーザーを用いてプラズマを生成することができるとのことです。


このチームは、少量の重金属を含む水溶液を使用してLIBS技術を実演しました。まず、μシリンジを用いて音響浮上システムに水滴を置きます。次に、30mJのNd:YAGレーザーシステムを用いて、10nsのパルスレーザーを浮揚した水滴に照射しています。生成されたプラズマは、平凸レンズによって集められ分光計にて化学分析されます。この一連のプロセスはわずか数分で完了します。


同チームは、水滴試料中のわずか0.2mg / Lのバリウム、0.7mg / Lのカドミウム、1.0mg / Lの水銀および2.0mg / Lの鉛を検出し、複数の試験で再現性のある結果を提供することができたことを報告しています。





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