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微小液滴デジタル制御技術 各方式の違い

使用する微小液滴デジタル制御技術の方式によって、スピード、再現性、作製可能な液滴サイズ、使用できる液の自由度、開発難易度が大きく異なります。

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ピエゾ式インクジェット

ピエゾ素子の微小変位を利用して微小液滴を吐出する技術です。

​エプソンやブラザーに代表される市販プリンターに用いられている技術であり、液体のデジタル制御技術の中で最も応用研究が盛んな技術です。

吐出原理:

液滴を吐出するノズルの数だけ、流路が個別に分かれています。

その個々の流路に圧力を発生するピエゾ素子が取り付けられています。

ピエゾ素子へ電圧を印加することでピエゾ素子が変位し、ピエゾ素子直下の液が圧縮されます。

この圧縮によって発生した圧力波がノズル先端まで伝搬し、液の振動が発生します。

この発生した振動によって液の吐出動作を行います。

なお、吐出後の液の自動供給は個々のノズルの毛細管力によって達成されるため、液供給用ポンプなどは不要です。

 

特徴:

入力する波形によって吐出する液滴形状や吐出速度を制御可能です。

​また吐出動作の1サイクルが短いため、高周波での駆動が可能です。

​一般的なインクジェットヘッドは1つのヘッドに数100ノズルが搭載されており、1回の印刷で約50mm程度の幅が印刷可能です。このヘッドを連結することで1m程度の幅を一度に印刷することも可能です。生産性を高めることが可能な方式であることが特徴です。

​吐出原理 概念図

吐出過程動画

アンカー 1
アンカー 4
サーマル式インクジェット

​ヒーターの瞬間的な加熱による液の沸騰(膜沸騰)を利用して微小液滴を吐出する技術です。

​キヤノンやhpに代表される市販プリンターに用いられている技術です。

吐出原理:

ピエゾ方式と同様に、液滴を吐出するノズルの数だけ、流路が個別に分かれています。

その個々の流路にヒーター素子が取り付けられています。

ヒーターを瞬間的に加熱することで、ヒーターに接している液体を急激に加熱させ沸騰を起こします。

沸騰によって発生した気泡の急激な成長によってノズルから液を吐出する仕組みです。

発生した気泡はヒーターの加熱を停止することで、短時間で消泡します。

また、液の供給はピエゾ方式と同様に個々のノズルの毛細管力によって自動供給されます。

 

特徴:

高密度化が可能であり、1つのヘッドに搭載されているノズル数はピエゾ方式よりも多く、数万ノズル搭載されているヘッドもあります。ピエゾ方式と同様にインクジェットヘッドを連結することで、大面積を高速に印刷することが可能です。

​しかし、沸騰現象をもとにしているため、使用できる液が低沸点の液に限られます。

​吐出原理 概念図

アンカー 2
アンカー 3
静電式インクジェット

吐出原理:

細いガラスキャピラリーに液を充填し、液と基板を数~数10μmの距離に設置します。

ガラスキャピラリー先端と基板の間に高電界を加えます。クーロン力によってガラスキャピラリーから基板に液が引っ張られて着滴することで印刷を行います。

特徴:

印刷可能な幅やドットサイズが、使用するガラスキャピラリーの細さに依存するため、ピエゾ式やサーマル式では実現困難な10μm以下の細い線やドットが実現可能です。

また、クーロン力は電界に依存しているため、ガラスキャピラリーと基板との距離次第で非常に強い力を発揮し、高粘度液の対応も可能なことが特徴です。

なお、基本は液を吐出する部位(ノズル)が一つであり、基板とガラスキャピラリーとのμmオーダーでの距離制御が必要となるため、高速印刷や高い生産性の確保は困難な手法です。

​吐出原理 概念図

​吐出状態

パイプジェット

細い樹脂パイプに液を充填します。

そのパイプを積層ピエゾによって、瞬間的に圧縮することで液を押し出す手法です。

特徴:

駆動源と接液部(パイプ)が分離しているため、接液部のパイプ部のみをディスポーサブル(使い捨て)として使用できます。

また、押し出す液量は数10nl(約100~500μmの球に相当)と大きいため、微細印刷には適していません。また、高周波応答はできず、高い生産性は実現できません。

そのため、スポッティング用途での展開が多く、ディスポーサーブルの特徴を活かし、コンタミを嫌う​バイオ用途でのスポッティングに用いられています。

​吐出原理 概念図

アンカー 5
ニードルジェット

吐出原理:

細いニードルに付着した液を基板に接触させることで、基板に微小液滴を転写させる方式です。

液の入った領域をニードルが通過することで、ニードル先端への液の付着を繰り返し行います。

特徴:

ニードルの駆動はピエゾで行っているため、高粘度液の対応が可能です。

基本的には1つのニードルを操作するため、生産性はあまり高くありません。

​また、ニードルが基板に接触する方式であるため、使用できる基板との接触の影響を把握する必要があります。

アンカー 6
エアロゾルジェット

液体を数μmオーダーの粒子に噴霧化し、気流を基板に照射することで噴霧化した液体を基板に付着させる方式です。

特徴:

噴霧化可能な液体は制御できるため、液の自由度は比較的高いです。

気流を照射するノズルの細さと気流の設定によってパターニング可能な最小分解能が決定します。条件設定次第で最小10μm程度の細線も形成可能です。

また、気流の吹き付けにより制御しているため、凹凸のある基板への対応も可能です。

​なお、基本的には1ノズルであるため、生産性はそこまで高くありません。

​吐出原理 概念図

​吐出原理関連動画

塗布動画

バルブジェット

吐出原理:

液を常に加圧している状態です。

液の吐出ON/OFFを流路先端に設置された電磁弁の開閉によって制御する方式です。

特徴:

液滴サイズは他の微小液滴デジタル制御技術に比べて大きく、小さいノズルを選定しても数nl~数10nlとなります。

液滴量が電磁弁の開閉に依存するため、他の手法に比べばらつきは大きいことも特徴です。

また、基本的には1つのノズルから吐出する機構であり、電磁弁の開閉周期が長く吐出ON/OFFの1サイクルが他手法に比べて長いため、生産性は高くありません。

 

しかし、システムが簡易であり、液の自由度が高い、ロバスト性が高いといった特徴を有しており、装置への組み込みが容易であることも特徴です。

​吐出原理 概念図

アンカー 7
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