微小液滴デジタル制御技術の基本
本サイトではこれから微小液滴デジタル制御技術を利用する方に向けて、微小液滴デジタル制御技術を使う上で知っておいてほしい基本を案内します。
微小液滴デジタル制御技術とは?
微小液滴デジタル制御技術とは、1mm以下の微小な液滴の吐出ON/OFFを1滴毎に制御できる技術を指しています。
吐出のON/OFF信号に従い、微小液滴が空中を飛翔し、対象とする基板に着滴する技術です。
この技術の代表例が、市販カラープリンターで用いられているインクジェット技術です。インクジェット技術では、数100以上あるノズル(液を吐出する穴)から、約20μm程度の直径の液滴を各ノズルから1秒間に10,000回以上のON/OFF動作を行うことでパターニングを行っています。
なお、インクジェットプリンターに用いられているピエゾ方式やサーマル方式(バブル方式)は、複数ある微小液滴デジタル制御技術の方式の一つです。
この微小液滴デジタル制御技術は必要な部位に必要な量、材料を滴下できる技術です。
そのため、省資源、省エネルギーの技術として、多くの分野で応用が進められています。
このような応用の流れは、2000年頃から活発に進められており、近年多くの研究結果や応用のニュースが発表されています。
ピエゾ式インクジェットの吐出過程
液体の基本1
微小液滴デジタル制御技術は、液物性の影響を大きく受ける技術です。
そのため、使用する液物性に関して詳細に把握しておく必要があります。
以降に、基本的な液物性として、粘度と表面張力を紹介します
粘度:
微小液滴デジタル制御技術で扱う液体は、一般的に粘性流体であり、使用する技術によって適性粘度が異なります。
手法によって取り扱い可能な粘度が異なる上に、必ずしも低粘度液であれば良いというわけではありません。
ここでは、液体の基本情報として粘度に関して記載します。
粘度
粘度は、「粘性係数」「絶対粘度」「粘性率」ともよばれます。その名前の通り、液体の粘り気を定量的に表現した数値に該当します。
粘り気である、液体内の抵抗を「せん断応力」と呼び、速度差によって大小変化します。微小流域の速度差によって発生するせん断応力は、その速度勾配に比例することが知られています。その比例係数が粘性係数(粘度)です。
粘度の単位は、「Pa・s(パスカル秒)」です。
粘度と動粘度の違い
上記粘度と同様に使われる言葉として「動粘度」があります。粘度は流体中で発生する抵抗を表していますが、動粘度は流体の動きにくさを表した値です。そのため、液体の密度が変わると変化します。動粘度は絶対粘度を密度で割ることで算出できます。
粘度と温度の関係
液体の粘度は、温度によって変化します。
一般的には温度が高いほど、粘度が低下します。これは、分子間力が低下するためです。
温度によって粘度が変化するため、使用環境温度における粘度の把握が重要になります。
粘度を知る重要性
微小液滴デジタル制御技術では、微小液滴を取り扱うため、100μm以下の微細流路を用いています。その微細流路から、飛翔できる程度の速さで液体が吐出されるため、流路内に非常に高い速度勾配が発生し、大きなせん断応力が発生します。
そのため、せん断応力の大小に影響を与える粘度は微小液滴デジタル制御技術にとって非常に重要なパラメータの一つです。
以下に代表的な液の粘度を記載します。
液体の基本2
表面張力:
微小液滴デジタル制御技術で吐出される液滴は、微小です。微小液滴の挙動は、私たちが通常の生活で体感する液滴サイズ(mm~mオーダー)の挙動と大きく異なります。
サイズの違いにより発生する違いとして、表面積の影響があげられます。体積の影響はサイズの3乗に比例するため、サイズが半分(1/2)になると1/8になります。一方で表面積の影響はサイズの2乗に比例するため、サイズが半分になると1/4になります。このため、サイズが小さい世界ほど体積による現象よりも表面積による現象が優位になります。
通常私たちが体感する世界は、体積に比例する重力の影響を大きく受けます。一方で、微小液滴の世界では、体積よりも表面積の影響尾受けるように変わるのです。
その代表的な物性が表面張力です。
こちらでは、一般的な液体の表面張力について紹介します。
表面張力
表面張力は、液体の表面がみずから収縮して表面積をなるべく最小化しようとする力です。具体的には、液体の分子間力によって働く力であり、この力によって、空気中の水滴は丸くなります。
単位は N/m(ニュートンパーメートル)です。
液体の表面張力と目安
一般的に使われている液体の表面張力値は以下のようになります。